三宅正志　with 今井宏明

　私たちは、日常さまざまな人工物に囲まれ、現代社会のシステムに組み込まれて、多くの生活が成り立っています。耳には聴こえず、目にも見えないデジタル通信網によって世界が繋がり、情報が無限大に交信されている世界に住んでいます。
　しかし、一歩足元を踏みしめてみれば、アスファルトの下には巨大な大地が存在し、空を見上げればビルや建物の遥か上空には無限の空が広がっています。朝には全てを照らす太陽が昇り、夜には月が巡り、季節の到来と共にその季節にふさわしい花々が咲く。手には掴めない空気が風となって吹き、心地良い気が肺に流れ込んでは、人の心肺を満たしてはいのちの呼吸を繰り返し、空から降った雨水や地から湧き出た泉が、生命を生かして潤す。自然がもたらすかけがえのない命が響き合い、私たちは生かされていることに気づかされます。
　「響き合う世界」は、長年に渡ってグラフィックデザインの仕事に携わってきました故今井宏明さんとの共同によって生まれたフォトグラフィックアート作品です。自然をテーマに写真撮影やデザインを行なってきた過程で、自然がもたらす生命力や美しさ、自然現象が生み出すエネルギーの固有の性質に強い感動を覚え、そこから得たインスピレーションを、「月」「火」「空」「山」「稲穂」「泉」「川」「大地」「観音」「風」「海」「太陽」という「自然12態」にまとめて、そのかけがえのない命の輝きを作品に込めました。